5 映画 銀幕に酔う

邦画『ハウルの動く城』

貫く純情 汲めども尽きぬ楽しさと透明感

 (宮崎駿監督、公開2004年11月、MOVIX三好)

 宮崎駿監督の前作『千と千尋の神隠し』との比較をうんぬんの前に、やっぱりすごいと思う。絵の徹底したリアリズムとストーリーの自由さの対比、構想の雄大さと登場人物たちのよどみない動き。そして何よりも、全編を貫く純情さ…。

(▲自宅のジブリ作品のDVDやパンフ)

 いずれも従来の宮崎ワールドの構成要素なのだろう。今回もまた、汲めども尽きぬ楽しさと透明感、いかようにでも読み取れるメッセージ性にもあふれている。

 画面から飛び出してくるような主人公はお茶目で負けん気があり、一本気で勇気もある。何よりやさしさにあふれている。そんな少女の恋の相手は、これまた純な心を持つスーパーマン的な青年だ。

 ただ単純なおとぎ話で済ますわけにはいかないだろう。この作品に込められた「戦争への心からのNO」の訴えをどう評価するか。そのあたりで見方が分かれる気がする。