2 小説 物語に浸る

浅田次郎『オー・マイ・ガアッ』

軽いノリで描く ラスベガスの突き抜け感

 (集英社文庫、初刊は2001年)

 浅田次郎の小説はこれで10冊ははるかに超えた。その中では低位にランクせざるをえない中味だ。とくに後半はダレてしまった。

 米国文明論はわかりやすいけれど、かなり一面的な見方に偏っている。それを具現するとみられる人物もワンパターンだ。これは浅田次郎の”お笑い系小説”に共通する特色だと思うが、あの『キンピカ』や『プリズンホテル』と比べると深みにかける。ベトナム帰りの元米兵、アラブの王様、マフィアの老人といった設定に限界があるのかもしれない。

 それでも、ラスベガスのとんでもない虚構性、非日常性はよく伝わってくる。米国のひとつの象徴として、NYとともにゆっくり訪ねてみたい気もする。いや、ぜひ、行ってみたい。賭けた金はみなすってしまうのだろうけど、それも人生と思えば、ある種のカタルシスは必ず得られるだろう。

 大前鋼(オーマエゴウ)とか梶野(カジノ)とか、まあ、設定もかなりのオチャラケ気分なので、筆者は軽いノリで物語を作っている。書きたかったのは、ラスベガスの突き抜けた面白さと、日米の従属的歴史、日本社会の息詰まる閉鎖性みたいなものだろう。本人も年に何回かはベガスへ行っていたというから、極道とバブルに関係する作品が多い浅田氏ならではの世界、というべきだろう。

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