5 映画 銀幕に酔う

邦画『村の写真集』

藤竜也がいい味 あのころは戻らない

 (三原光尋、公開は2004年)

 主演の藤竜也がいい。律義でがんこな写真館店主の役。かつては脂ぎったヤクザの番頭だったというイメージを残している。それによってかえって律義な感じが強まり、この作品にふさわしい味を出している。

 映画に出てくる「水没の村」は徳島県の奥地だ。大学1年の時にインカレの後に旅行した大歩危、小歩危の祖谷村だろうか。村人たちの自然な表情が映画の神髄を支えている。

 こんな日本の村の様子は、ぼくが育った舞詰の与保呂の集落も似た感じだった。昭和20年代から30年代のあのころは、もちろん、もう戻ってはこない。戻ろうとしても戻れない。監督もそんな体験の持ち主だろうか。本当に戻りたいかと問われたら、逡巡する気も、ぼくにはある。

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