4 評論 時代を考える

加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』

「それでも」の意味がやはり気になる

(朝日出版社、2009年7月)

 このタイトルにはとても惹きつけられる。あの戦争、日中戦争や太平洋戦争について、軍が暴走したからとか、天皇や政治家がそれを止めなかったからだといった単純議論ですませてはいけない、という感覚が「それでも」から浮かび上がってくるからだ。

 筆者が「それでも」に込めた意味は、人間の社会や政治というものは、民衆の気持ちや情緒、方向性などの支えがなければ長続きしないということだと、ぼくは理解した。

 国のすべての力を注ぎこまなければできないことは、国民が望んでなければできなかった、ということでもある。
 そうだとすると、これからの戦争をどう防ぐかについても、ひとりひとりがもっともっと真剣に考えないといけない。

 栄光学園の中高生を対象にした集中講義がもとになっている。それなのに出てくる資料や各論は水準が高く、生徒もみなまじめで、驚く。なんかほっとした。

 今回は一気に読み進めてしまったが、やはり「それでも」に込められた意味が気になる。それを支える具体例とか背景とかをぼくがまだ整理ができていないからだろう。もう一度じっくりと読んでみたい本だ。

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