5 映画 銀幕に酔う

邦画『 ALWAYS 三丁目の夕日 ’64 』

「最も輝いていた年」再現 客観視の視線も

(山崎貴監督、2012年1月、MOVIX三好)

 ALWAYS3部作の第3弾。1作目の想定は1958(昭和33)年だった。2作目が1959(昭和34)年。この第3弾はその5年後の1964(昭和39)年の夕日町を舞台にしている。

 ずばり、東京五輪と東海道新幹線開通の年である。ぼくは12歳、京都府舞鶴市の山奥に住む小6だった。

 いつもの俳優たちが登場し、前2作の成功から生まれた自信が画面に安定感をもたらしている。悪人はいない。「もっとも日本が輝いていた時代」の再現は安心して観ていられるし、ノスタルジーも共有できる。

 その反面、緊張感のなさも感じた。あの時代を客観視しようとする台詞もところどころに出てきて、没頭しきれない。

 三浦友和が演じる先生がときどきそんな視点の言葉を発していた。堤真一の下町おやじに大げさな演技をさせる分、第3部だから冷静な視線もほしい、という意図だったかもしれない。

 個人的には、当時のムードに浸り込んだまま終わった方がよかったのではないかと考える。このシリーズの評価の根本にかかわるところだろう。

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