5 映画 銀幕に酔う

邦画『Railways 愛を伝えられない大人たちへ』

定年夫婦の葛藤と選択 わかる 同世代だから

(蔵方政俊監督、公開は2011年12月)

 三浦友和がますます、年齢を重ねた上での”いい味”を出すようになった。同じ1952年生まれなので、その辺の感覚は肌でわかる。

  余貴美子が演じる妻も、女として、看護師としての生き方の提示にリアリティがあった。

 定年という大きな節目に揺れる夫婦それぞれの思いとすれ違い。いろいろあって、勤続42年のまじめな夫はそのまま嘱託として電車の運転士を続け、妻は訪問看護師の仕事に飛び出していく。

 まさしく同世代のぼくにとって、夫婦の葛藤も、その結果の選択もわかりやすく、納得のいくものだった。

 舞台になった富山はぼくの初任地。1974年から5年半、新米記者として過ごした。赴任直前に結婚していたので、実質的な新婚生活スタートの地でもあった。だからロケに何度も出てくる富山地鉄の駅はよく利用したし、県庁や市役所のわきを流れる松川もなじみの場所だった。懐かしい。