4 評論 時代を考える

楡周平『「いいね!」が社会を破壊する』

ネットへの不安ずばり 新聞への警告も

 (新潮新書、2013年10月)

 筆者は1996年に『Cの復音』で作家デビューした。当時から「ビジネスの最前線を知る国際派作家」の好印象があり、いずれ次にと思いつつ読む機会がないままだった。しかしこの本のタイトルには動かされた。

 一読して、ITネット社会に対してぼくが感じてきた不安、否定したい情動にピタッとはまる内容であったことに驚いている。

 説得力を感じる理由は、アナログ時代の成功企業、コダックに勤務していたという経歴と、ITビジネスが持っている破壊力についてはぼく以上に危機感を抱いているということだ。印象に残る指摘をあげると-

  • コダックが対応できずに破壊された理由は、あまりにもビジネスモデルが完成しすぎていたことだ(これは、新聞社への強烈な警告である)
  • IT企業の戦略は「すばやく動き、破壊せよ」。アマゾンの急成長は既存企業の中間・間接部門を破壊していくだろう。
  • いまのITによる「便利の追求」にみなが酔ってしまうと、既存の文化も雇用もみな奪われてしまうだろう。
  • 「いいね」ほど怖いものはない。ただほど怖いものはないのだ。その先には勝者なき世界が待っている。

 これほどネガティブなIT未来論を知らない。新聞社に長くいる身として頷けるものばかりである。この方向に進んでいくのは避けがたいだろうと思うのに、新聞社としての対応策が浮かんでこないのが悲しい。つらい。

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