5 映画 銀幕に酔う

米映画『人生の特等席』

野球スカウトの晩年 イーストウッドの情熱

 (ロバート・ロレンツ監督、公開2012年11月)

 クリント・イーストウッドが自ら出演する作品をぼくが観たのは、2009年の『グラン・トリノ』(監督もイーストウッド)が最後だった。

 あれから5年たち今度は、野球スカウトの晩年を演じる。前の主演作は朝鮮戦争やベトナム戦争が下敷きで今回は大リーグ。監督した『父親たちの星条旗』は太平洋戦争…。やっぱり米国を代表する映画人なのだ。

 主人公はスカウト業で目利きとして知られていたが、妻は娘が6歳の時に死んでいる。娘には7歳ぐらいまで野球の基礎知識を教え、スカウト現場にも連れて行っていた。妻の死後、関係はうまくいっていない。

 そしていま彼は視力が衰え、現役を続けられるか危機にある。それをバリバリの弁護士になった娘が手助けする。主人公がかつて見出し、今はライバルのスカウトになっている青年がからんで、娘と恋仲になる―。

 イーストウッドはすでに80歳を超えているはずだ。この5年で明らかに身体的には衰えが進んだものの、映画への熱は衰えることがないようだ。アメリカの良心を感じる偉大な映画人に次作はあるだろうか。

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