5 映画 銀幕に酔う

邦画『深夜食堂』

漫画より染みたぞ 上質な舞台演劇の味

 (松岡錠司監督、公開は2015年1月)

 原作の漫画を少し前に読んで、しぶい世界を上手に描くなあ、と思った。会社の後輩から「面白いのがありますよ」と貸してもらったのだった。

 その漫画をもとに映画化されたのをDVDで観た。漫画よりも染みた。この情感、わかる。店の空気も、客と主人との距離も肌で感じられる。

 食堂「めしや」の主人役である小林薫は、2年前に見直した『居酒屋兆治』(1983年11月)の高倉健を思い浮かべた。健さんよりソフトで庶民的だ。

 オムニバスで出てくる脇役たちがまた上手である。新潟・親不知出身の料理上手な若い子、東北大震災の津波で妻を亡くした40男、骨つぼを残していった50女…。上質な演劇の舞台を観ているような感覚だ。

 ■「料理映画」に外れは少ない

 それにしてもこういう料理ものというか、飲み屋・食堂ものの映画は面白いのが多い。別の表現をすると、外れが少ない。

 邦画でいえば、函館が舞台だった『居酒屋兆治』のほかにも、ヘルシンキが舞台の『かもめ食堂』(2006年)や、金沢郊外の中華料理店が舞台の『しあわせのかおり』(2008年)が、みな独特の味を出していて後味も最高だった。

 もちろん洋画も負けてはいない。デンマーク映画の『バベットの晩餐会』(1989年)には、料理にはそれほどの求心力があるのかと強烈な印象を受けた。美食の国フランスの『大統領の料理人』(2013年)もよかったし、フランスとインドをからませた米映画『マダム・マロリーと魔法のスパイス』(2014年)も映画素材の絶妙な取り合わせに驚かされた。

 料理店やレストランの映画は、ど真ん中に、だれもが関心がある料理がある。それだけでよだれが出る。そこに店主やコックと作り手がいて、食べにやってくる客がいる。となると、人間模様の絶妙なソースがいくつもできあがる。面白くならないわけがないのだ。料理映画、もっと観たい。

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