9 名古屋 地元を旅する

パラミタ・ミュージアム

ジャスコと池田満寿夫 しあわせな結実

 (三重県菰野町、2003年開館)

 東海地方であっても、名古屋に住んでいると訪れる機会が少ない美術館である。2003年の開館以来、ぼくの頭の中では「イオンの美術館」という認識で存在していたが、訪ねたのは初めてだった。御在所の中道登山の帰路、妻と立ち寄った。

(▲パラミタミュージアムHPから)

 この美術館にはキーマンがふたりいると思った。

 ひとりは小嶋千鶴子氏。四日市の呉服店を父母から引き継いでスーパーに進出しジャスコを育てあげた岡田きょうだいのひとりだ。パンフレットなどによると、60歳の時に弟の岡田卓也氏に経営をゆだね、この美術館の設立に尽力したという。いまは岡田文化財団が管理・運営している。

 もうひとりは故池田満寿夫だ。陶芸の代表作『般若心経シリーズ』がこの美術館に展示してある。千鶴子氏がこの作品群を気に入り、展示できる美術館の建設を前提に買い取ったそうだ。

 池田満寿夫といえばエロチックな版画や芥川賞『エーゲ海に捧ぐ』が有名だ。マルチタレントであることも知っていたが、64歳で急死する直前に陶芸に熱中し、しかも主題が般若心経だったとはまったく知らなかった。

 展示してあるたくさんの地蔵や仏塔の陶芸作品と、大乗仏教の経典との芸術的な関係性は正直ぼくにはわからない。それでも、この芸術家の表現意欲のほとばしりには圧倒されてしまった。 

 「パラミタ」という美術館名も般若心経にちなんで梵語の「波羅蜜多」からきている。新聞で一般公募して選んだというのも、なんだかうれしい。

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