4 評論 時代を考える

高橋源一郎『ぼくらの民主主義なんだぜ』

感性重視 違和感が基盤 がんばれ源ちゃん

(朝日選書、2015年5月)

 ぼくより年齢がひとつ上の作家が、朝日新聞朝刊の「論壇時評」に書いてきた48本の論評を1冊に収めている。

 記事のほとんどは、新聞紙上でリアルタイムに読んできた。6、7人の筆者の中で目線がもっとも近く、説得力を感じた。マイナーな雑誌やネット上の発言までフォローする姿勢にも驚いた。作家なのにジャーナリストみたいだと。

 まとめて読みかえしてみると、ことばを大切にする小説家として直感を大事にしていることに気づく。事実を優先するジャーナリストではないから、正論や常識の向こうにある感情とか感性にこだわろう―。それが作家の矜持なのだろう。

 加えて正直さ、奥深さ、控えめといった気質が微細な表現の中に含まれているので、温かみも残されていてほっとする。そのあたりの呼吸は、NHKラジオの朝の番組『すっぴん』金曜日に出てきて、藤井彩子アナと繰り広げる軽妙なトークと同質なのだろう、とにらんでいる。

 1本目の掲載は2011年4月。ひと月まえの東日本大震災と原発事故から始まり、朝日新聞の慰安婦報道、IS問題など、その時々のホットで敏感な時事問題も逃げずに正面から切り込んでいる。

 考え方の基盤にあるのは、日本社会がいま抱える負の特質への強い違和感ではないだろうか。公開を渋る官の閉鎖性、安倍政権発足後の反知性主義、個人より国家という意識…。ぼくも同感だ。がんばれ、源ちゃん。

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