3 随筆 個性に触れる

弘兼憲史『男子の作法』

よくぞ男子に生まれけり 「粋」への応援歌

(SB新書、2017年1月)

 この本は新聞の読書欄で知った。本屋さんでまえがきを読んだら冒頭に池波正太郎の『男の作法』が出てきたので、池波版を読んでから弘兼版を手にした。

 弘兼氏は『課長島耕作』の連載を始める前、作品にリアリティを持たせるため池波版を読んだとある。今回はその現代版である。

 どちらも読んでいて妙にうれしくなった。よくぞ男子に生まれけり。仕事も趣味も「粋」を大事にしながら謳歌しよう、という応援歌なのだ。

 この弘兼本は、彼の生き方や人生観について以前から知っていた事柄と、『課長島耕作』や『黄昏流星群』の印象とがないまぜになっていて、池波本とは表面的にはまったく違う指南書になっている。ゴルフが好き、段取りが大事と思うところは、ぼくと似ている。

 最終章の「自己・人生」はこう締めくくられている。

  勝ちばかりではない。負けた時には「まあいいか」「それがどうした」「人それぞれ」というシンプルな言葉で乗り切って、また一歩、前に踏み出す。そうやって70年近く生きてきた。

 ぼくもこの先、何かに負けたり、どうするか大いに迷ったら、本棚からこの本を取り出そう。そう思えるだけで力になる。

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