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CBCラジオ「星野仙一さん追悼特別番組」

声と語りと歌…お宝音源ならではの肌合い

 【注】CBCラジオの番組審議委員として2018年3月の審議会に書面参加した際の文章です。対象の追悼番組は1月14日に放送されました。CBCラジオの許諾を得て公開します。

 星野さんが亡くなられてからわずか1週間で作られた番組とは思えないほど、中身が濃いことに驚きました。そして何よりも、突然の死を惜しむスタッフや周囲の気持ちが全編ににじみ出ており、正真正銘のラジオ局の追悼番組になったと思いました。その点を高く評価します。

  冒頭で昨年末のドラ魂キングに出演された星野さんの肉声が紹介されました。いま思えばいつもほどの張りはないものの、深刻な病魔の影を感じることはありません。久野アナウンサーの定年記念ということで特別に出演されたと聞き、義理人情を重んじる星野さんらしさと、体の異常を人前で見せなかったダンディズムを聴く人にあらためて感じさせて、ぐっとさせます。

 ほかにも、CBCさんがお持ちの「お宝音源」がふたつみっつと紹介されていきます。そのたびに、さすが地元局、これぞラジオ番組のだいご味、と強く思いました。なかでも25歳の時の「雪が降る」の歌声や、阪神監督受諾時の思いと家族を語ったときの涙声を耳にすると、われわれ新聞の追悼記事では伝えきれない生身の肌合いがにじみ出てきて、うらやましくもなりました。

 番組を聴いているうちに、星野さんという野球人は、プレーやしぐさよりも、あの声と語り口に最大の魅力とあの人の本質が詰まっていたのではなかったかと思うようになりました。声は野太く、よく通り、だれの声かすぐわかる。出てくる言葉はよどみがなく、センテンスは短い。使う単語も明確で、大半がポジティブで、あいまいな語尾を嫌う。試合中に吠えたり叫んだりする望遠映像をテレビで見ても、観る者の頭の中ではあの声が同時に響いている。

 その意味では、多くの有名野球人の中でも、キャスターとか俳優とか政治家とか経営者に必要な資質をあわせもった稀有な人だったということも、この番組では伝えているように思いました。 それはある意味で、星野さんは実に「ラジオ向きの男であった」といえるのではないでしょうか。この番組は星野さんのそうした魅力を最大限にすくい取り、リスナーに伝えてきれていると思いました。

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