1 ゴルフ 白球と戯れる

ハーフベストでも44位…ミッドシニア中部決勝

神様いた初日前半 「全国」意識 し痛いミス

 (三重・涼仙ゴルフ俱楽部、9月1・2日)

 65歳以上のアマが競う中部ミッドシニアゴルフ選手権の決勝(中部ゴルフ連盟主催)が9月1日と2日、三重県の涼仙ゴルフ俱楽部で開かれた。ぼくは初日の前半を1アンダーのハーフ自己ベストで回ることができ、上位15位までが出られる「全国」が一瞬見えた。しかし直後からミスを連発して最後は44位だった。そばに神様を感じたときの充実と高揚、欲と力みで自滅していく情けなさと喪失感…。この球戯の奥深くに潜むマグマに触れ、ゴルフ脳がひりひりと熱を発した2日間だった。

■初日アウト 自己ベストの1アンダー

 初日の1番ホールは381yのpar4だった。ぼくの第1打は腰も上半身も回りきらず、ひっかけ気味にフェアウェイ左端へ。落下地点へ向かう途中、距離計をロッカーに忘れてきたことに気づいた。「あっ、やっぱおれ、緊張してる」

 第2打は目測でピンまで170yあり、7番ウッドを強めに振ったら、ひどいトップになった。でも白球は花道を駆け上がり、グリーン右に乗った。ピンまで20yを2パットのパー。「ラッキー、きょうはついてるかも」

(▲2日とも8.2ft。重かった)

 その予感は2番ホール(372y、par4)で現実になる。第2打がピンハイ6mについた。雨がきつくなってきたので傘をさしながらさっと芝を読み、閉じた傘を横に置いてすぐに打ったら、ジャストタッチでバーディーとなった。

 いま神様がついている。そう確信したのは、3番ホール(481y、par5)だった。うまく寄せ切れず、きつい下りの5mパーパットが残った。平坦なら3分の2までしかいかないタッチでまっすぐに打ったら、これもジャストタッチで入ってくれた。

 あとの6ホールもみなパーをとれた。ティーショットがラフにいってパーオンを逃しても、アプローチが1m前後に寄り、危なげなく決められた。アウトのスコアは1アンダーの35。37年のゴルフ人生でハーフの自己ベストだった。

 ―公式試合で出るなんて。こんなことあるのか。宝塚へ行けるかもしれない…。

 休憩なしでインへ向かう途中、クラブハウスのロッカーに寄って距離計を取り出しながら頭のすみでそう考えていた。2日間で上位15位に入れば、11月に宝塚ゴルフ俱楽部で開かれる全国大会に出場できることになっていたからだ。

■初日の後半には 神様手放した予感

 でも神様はいつまでもそばにはいてくれない。後半に入ってすぐ真実に気づく。まずドライバーが左へぶれ始めた。それでも10番(イン1番)と11番(イン2番)は寄せとパットでしのぎパーにできた。

 しかし12番(イン3番)から14番(イン5番)までは、頼りの寄せが完全でなかったり、1mパットを外したりして3連続ボギーにした。パーがほしくて余裕がなくなり、体が硬くなり、リズムもぎくしゃくしつつあるのを自覚していた。

 その乱れが大きくなったのが17番(イン8番、389y、par4)だった。ドライバーを右の林へ打ち込んだ。打ち急いでフェースが開いたまま入りスライスした。

 ずっと気をつけていたのに…。アウトは距離計がなくて直感で打っていたから神様がいた…。インでは打つ前に距離計で測る習慣を復活させ、それが体を硬くさせているかもしれない…。頭がうじうじと考え始めていた。

 林の中のボールは薄い芝と土の上にありライは悪かった。でもピン方向の30y先、2本の木の間に幅10mほどの空間があった。6番アイアンで低い球を打ち、樹間を抜こうとしたが、ボールは左の木の幹に当たって手前に跳ね返ってしまった。上がればダブルボギーだった。

 初日は35、41の76。出場107人のうち15位タイだった。同スコアが6人。アウトの35はトップ選手とぼくの二人だけ。前半の神様の力がいかに大きかったかを物語っていた。

■勝負の2日目 3番でトリプルボギー

 そして迎えた2日目。悪夢はすぐに3番ホール(481y、par5)でやってきた。ドライバーを上半身だけで打ちに行ってしまったのだろう、左に大きく曲げ、ボールはラフの斜面に止まった。

 25yほど先に樹林があり高さも15mはある。ボールは前上がり斜面のラフに半分ほど沈んでいる。ぼくは林の上を越そうと8番アイアンを振ったが、トップして球は林の中に突っ込んでいった。

 頭が自己嫌悪でかっとなっていた。林の中から第3打をアイアンで150yほど打ってフェアウェイに戻そうとしたが、ボールは予想より高く上がり100yちょっと飛んだだけ。草がからんだヘッドを眺めると番手は「9」。あろうことか「6」と読み間違えたのだった。

 第4打もバンカーに入り、上がってみれば最悪のトリプルボギーになった。上位15位に入り宝塚へというぼくの夢は、2日目の3番ホールで砕け散ってしまった。あまりにも自分が情けなく、その後も弱気の3パットを3回も重ねてしまった。

 終わってみれば2日目は43、42の85。この大会は全長が6389ヤードに設定されていたから、ぼくの普段のスコアに戻った。2日間の合計は161で、全体では1日目の15位タイから44位タイにまで順位を下げた。「全国」出場権のある15位は計154。ぼくとの差は7打もあった。ぼくが全国に行くにはあの緊張の中でも「78」で回る必要があった。

■もともと全国は”ダメ元”だった

 この大会の予選は6月に4回あり、ぼくは23日の愛知カントリークラブで参加した。このときのスコア80(par74)は、通過できた33人のなかでもっとも悪かった。

 この大会に出てくるのは65歳以上の「じいさんゴルファー」ばかりだけれど、歴戦の強者ぞろい。遅くても40代から競技ゴルフで鳴らしてきた腕自慢が大半だろう。

 ぼくにはそんな腕も戦歴もなく、68歳で完全退職してから競技に打ち込み始めた。しかも70歳。65歳の「ルーキー」とは5歳もの差がある。この年代の5歳差は大きい。

 こんな風だから、美しいことで知られる涼仙GCでの決勝でプレーできるだけですごくうれしかった。「全国」はダメ元だったけど、初日前半の1アンダーがひと晩、すばらしい夢をみさせてくれた。

 昨年初めて出た中部決勝(富山・呉羽CC)は66位タイだった。超高速グリーンを楽しむことができ大満足だった。ことしは初日前半だけでもトップタイになり、一時的に「全国」に近づけたし、最終順位もかなり上がった。成長の手応えと悔しさ、2日間競技での高揚と落胆の乱高下とそのダイナミズム…。いろんな想いを反芻している。

■あと2大会 「全国」への壁なお高く

 「全国」につながる公式競技で、ぼくが予選を通過できた大会はことし、まだふたつ残っている。

 来週の9日(金)には、70歳以上のアマが競うグランドシニア選手権の中部決勝が岐阜県の三甲ゴルフ俱楽部谷汲コースである。ことし70歳になったぼくは「ルーキー」だから、ミッドよりチャンスはあるかもしれない。

 もうひとつは日本パブリックゴルフ協会(PGS)が主催するミッドシニア選手権。やはり65歳以上が競う公式競技で、8月30日の予選を通過できた。中部決勝は9月末に三重県のアリジ・カントリークラブであり上位に入れば全国大会に行くことができる。

 どちらも「全国」への道は厳しい。でも野球でもまずは打席に立ち、バットを振らなければ本塁打は絶対にない。ゴルフもドライバーをリズムよく振り抜かないといい球は出ない。パターも強めに芯を打ち抜けなければカップインの確率は下がっていく。

 結果を恐れずに、堂々とリズムよくプレーして、緊張を楽しんでこよう。そう、ぼくには失うものは、何も、ない。

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