英国で始めたゴルフ もっと書いてほしかった
(朝日新聞社、初刊は2001年)
読み直しである。うかつだった。ぼくがもっとも好きなノンフィクションライターのひとりなのに、なんと30代にロンドンに1年も住んでいて、そこで始めたのがゴルフだったという。何も覚えていなかった。
- 1950年1月 茨城生まれ。僕よりも3学年上なだけだ。
- 1979年 『監督』。29歳であの名作をものにしていたとは。
- 1988年 『F1地上の夢』で新田次郎文学賞。38歳
彼はこの1988年に「バブルに沸く日本に嫌気がさした」とロンドンに1年滞在。住んだのがキングストン・アポン・テームズ。車で5分のところにリッチモンドパークがあり、その中にふたつのパブリックゴルフコースがあった。そのうちのひとつが36ホールのパブリック、リッチモンドパークゴルフコースだった。プリンス(5909Y、パー70)とデューク(5940Y、パー68)があった、と本にある。
- 1992年 『美味礼賛』。プロの舌と料理の深遠さをプロの筆で
- 1994年 『帰郷』で直木賞
- 1995年10月 東京中日スポーツに連載開始
- 2000年 この本のもとになったエッセイを週刊朝日に連載開始
- 2001年8月 この本の発刊
- 2009年 『ぼくたちのスコットランド紀行』
- 2009年8月 十二指腸がんで死去 (59歳 ! )
海老沢さん、本当にゴルフが好きだったんだね。回数も多い。ベスト84だが、50歳ごろで90-100。まあ典型的なアベレージゴルファーといっていいだろう。59歳での死はあまりにもかわいそうだ。
この人の文章は、エッセイでもノンフィクションでも、平易な言葉を使いながら、あいまいさを残さずにきちんと本質を読者に伝えてくれる。この本での表現も、ぼくが『監督』や『美味礼賛』を読んだ時に頭にしみこんでいった文字群と同じ匂いがした。
イギリスに住んで、現地のゴルファーとパブで意気投合し、翌日には近くのリンクスコースでラウンドする…。ぼくの夢も、海老沢さんのこの本を読んでいると、願えば叶うような気がしてくる。