2 小説 物語に浸る

逢坂剛『鵟(のすり)の巣』

第5弾には百舌は出ず 新展開に期待したが 

 (集英社文庫、初刊2002年6月)

 筆者の百舌シリーズは、バンコクへ赴任する前に夢中になった。この作品は第5弾。前から気になっていたが、文庫版があるのを知って読んだ。

 シリーズの主人公である警官の美希は、夫も正義感にあふれた一本気な警官だったが、百舌との死闘の末にすでに死んでいる。この新作では、美希と元警官で私立探偵の大杉、新聞記者の浅間がふたたび一緒に事件と向き合う。

 しかし今作では、戦う相手に百舌は出てこない。敵は警察組織の権力中枢に巣食っている同じ警察官である。

 期待して読んだ割には肩透かし気分が残った。設定は、60歳を過ぎた百舌シリーズファンには陳腐な感じがする。ラストのマンション内の銃撃シーンも、大きなからくりの物語の終わりとしては、劇場感にとぼしい。

 ぼくが年を重ねて目が肥えたのだろうか。ぼくよりひと回り年齢が上の筆者も、シリーズの大きな展開をはかるにはやはり年を重ねすぎたのだろうか。悲しいけれど、その両方のような気がする。

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