気楽なノリの街巡り デートスポット紹介も
(PHP文庫、200年10月)
系統だった解説書ではない。バラバラな現象と噂と独断のオンパレードに見える。8割はぼくもどこかで読んだか聞いたかした話で、そのうち3-4割は2週間前に読んだ『名古屋学』とほぼ同じだ。それでもしかし、よそ者だけどこのまま名古屋に住み続けるつもりのぼくとしては、面白かった。
中日新聞そのものが「ナゴヤなるもの」の筆頭のように扱われているのも『名古屋学』と同じ。おおげさな書かれようだけど、根本部分や本質面では的を得ているように感じる。
巻末に「名古屋のデートスポット」がまとめられている。データや対象がちょっと古いが、若者、アダルト、ジジババの3編に区分けされ、笑える。ぼくのいちばんのお勧めである明治村はジジババ編に入れられていてがっくりした。
この名古屋、こうして読むと、そよから来ても見るところは多い。しかしライバルも多い。博多、札幌、仙台、広島、金沢あたりが比較対象だろう。それらの街はみな名古屋より強いアイデンティティを持っているとぼくは思う。
どこか求心力にとぼしいこの名古屋の街も、もっと多様で重層的な強いイメージを出せないだろうか。それには時間と蓄積が必要にだろう。
(2020/05 追記)
この文庫の巻末によれば、筆者の中澤天童氏は作家で、1959年の名古屋市生まれ。この本は1994年「相対性名古屋理論」をもとに加筆し改題して2000年に出版されたが、その直後の2002年に惜しくもなくなっている。
2000年ころといえば、名古屋本ブームが起きていた。それをもたらしたのは、きんさんぎんさんブームやタモリ発言、テレビドラマ『名古屋嫁入り物語』のヒットがきっかけだった、と「はじめに」にある。
ぼくの説は、このときの名古屋ブームのおおもとは、1997年BIE総会で「2005年万博」が名古屋に決まったことと、その後の新空港同時開設決定にあるというものであるが、うんと後になって気づいた因果説だ。