大胆な空中庭園 「南海の記憶」野村なし
(大阪・難波、設計ジョン・ジャーディ、2003)
大阪球場の跡地にできた再開発ビル。昨年10月に一期がオープンした。注目していた建築だ。大阪、捨てたもんじゃない。
階段状にせりあがる屋根を庭園風に使っている。樹々も豊かだ。屋根の中央を波打たせてくりぬき、キャニオンストリートと名付けた構成は大胆で面白い。名古屋ではこういうデザインは採用されないだろう。
春らんまんになり、緑がもっと濃くなれば、大阪の人は集うだろう。
ぼくがいちばん注目したのは、実は建築ではない。もとの「大阪球場」「南海」の記憶をどう残したかだった。
キャニオンストリートの入口には、大阪球場のホームプレートとピッチャーズマウンドが残してあった。それはいい。
問題は7階の「Hawks Memorial Gallery」だった。投手、打者、野手に分けて生涯記録と写真が展示してあるのだが、なんと、野村克也(わが京都府の峰山高校の出身 ! ) の紹介が、どこにもない。案内役の若い女性に理由を尋ねたら「野村さんに頼んだけれど、断られました」「よく問い合わせがあります」との答え。
現地の大阪支社長らに尋ねると、ホークス側が野村を外したのではないかという。野村という男は現役晩年からいろいろと球団ともめて、あの鶴岡や杉浦の葬式にも出なかった、ホークスに泥をかけて出ていった男だ、という理屈ではないか…。浪速の人情、怨念、恐るべし。