ドラマ仕立て 金融への預言と警告
(小学館、2004年3月)
堅い経済テーマを得意の金融ビジネスマンドラマにして切り取り、問題点も提起する。そんな狙いはよくわかるが、取り上げた経済テーマの複雑さにぼくの知識では情けないことについていけなかった。
現実世界と同時進行かやや先を行く形で物語を進め、将来についての預言者になろうという狙いが筆者にはあった気がする。出世作の『日本国債』と同じ構図なのだろう。ただ現実の市場は、代行返上の売りを吸収して上がり続け、この本のようにSECが登場することもなかった。
夫婦の機微も書ききれていない気がする。男と女について、筆者とぼくの感覚がかなり違っているのかもとれない。
それとリョウの最後のところがどうも理屈がわからない。インサイダー取引にあたるということのようだが、彼があれを試みた本当の狙いは何だったのかがよく伝わってこなかった。
この筆者の本だとすぐ買って読む気になるのに、自分は経済部記者が長かったこともあってか、感想はどうしても辛口になってしまう。もしかすると、ぼくと同年代の女性作家が書く経済小説ということで、嫉妬や偏見も混じっているのかもしれない。そうだとすると、情けないなあ。