オランダこだわり徹底 細部も手を抜かず
(長崎県佐世保市、1992年3月)
福岡であった友好3紙の経済部長会の後、列車で向かった。ハウステンボス駅に着くと、写真で何度も見てきたホテルが見えた。
アムステルダム駅を模したという全日空ホテル。ディテールのしっかり感が遠目からもわかり、これは楽しめるかもしれないと期待しつつ雨の中を入口へ向かった。この段階ですでに、時間がゆったりと流れているのを実感する。
高さ100mの塔に登って街を一望し、運河めぐりの船に乗ってから、ホテルヨーロッパ内でランチをとった。広場の市役所建築を模した建物やガラス展、シーボルト出島館、エッシャー館なども見て回った。
このテーマパーク、徹底的して細部、ディテールにこだわっていることが最大の驚きだった。レンガ、窓、屋根、サイン、街灯、橋、運河、色づかい…。すべての要素をオランダアイテムで通している。決して手を抜かない。ここまでやることに畏敬の念を抱く。
その資金力も驚きだ。1992年の開館から10年。デザインとサービスの水準の高さ、テンションの強さを維持していることが、人気継続の最大の生命線なのだろう。
そうした賞賛の気持ちと並行して、別の疑問や思いもわいてくる。ぼく自身にも残る西洋崇拝を強く自覚するとともに、それへの反発、悔しさも強くなっていくからだ。
- オランダの街をこうも精緻に真似しなくてはならないのか。江戸の街への誇りはないのか…。
- なぜ多くの日本人を引きつけているのか。明治村ではどうしてこんなに人が集まらないのか。
このパークをバブルの産物というのは簡単だ。資産膨張という時代背景がなければ実現しなかったろう。考えてみれば日欧米の街の遺産は、その多くが時の権力者の力の発露であったり、経済的繁栄のアウトプットの集成であった。このパークもその大きな流れの中にあるのだと思いながら、雨の中、レンガ敷きの街を歩いた。