2 小説 物語に浸る

浅田次郎『プリズン・ホテル』

面白すぎる 泣けてしまう まいった

(集英社文庫、初刊は1993-97年)

 さすがである。うますぎる。脱帽というしかない。あの「きんぴか」と同じように、バリエーションの広さ、人物像の確かさ、極道が持つおかしさ、ホテル業と料理の不思議さ…。あれだけの材料をどこで身につけたのだろう。

 わずかひとつ歳上とは思えない体験の広さと深さ、生真面目とユーモアの交錯。同じように文章を仕事の軸とするぼくにとって、すべてがすごい。

 この人の本は読んでから「しまった」と後悔する確率が低い。というより、間違いなくどれも面白く、そして泣ける。まだ読めていない本が何冊か残っていることに喜びさえ感じる。

 夏秋冬春の全4冊。仕事と睡眠の間に読みふけって、読了に10日かかった。いや10日にわたってたっぷりと楽しめた、というべきか。

 どの季節の巻も最後の「解説」を書いている筆者が、なんと4冊とも、キャリアも知名度も華もある女性。筆致の水準も高い。ここでも、やられた、と思った。

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