現代ものと水準かわらず 器用こえた異才
(新潮文庫、初刊は1991年4月)
この作家の時代小説は前から気になっていた。でもどこまで面白いのか、不安もあって手を出せずにいた。この作品が39刷まで増刷していると知り読んでみたら、やはりというか、さすがというしかない巧さである。
藤沢周平や池波正太郎とはひと味もふた味も違う読み応えだ。展開のうまさやスキのない構成、ち密な文章は共通している。現代ものと同じ水準で時代物も書けるって、器用なんてことばでは表現できない異才に思える。
本屋の新刊本の帯には「過去最高の時代小説」の惹句が踊っている。あながち大げさではないのかもしれない。写真で見る童顔からは推し量りにくい、恐るべき天才女性作家と知った。