8 街歩き 建築を味わう

国立国際美術館

躍動するパイプ 市民は受け入れるか

 (大阪・中の島、設計シーザー・ペリ、2004)

 1970年の大阪万博会場に建設された美術館を閉鎖し中之島に再建築した。プロポーザルコンペでペリの案が選ばれた。地上にスチールパイプによる造形のみを突出させ、展示室はすべて地下にある。

 地上のパイプは躍動的な曲線から成っている。多くの人がシドニーのオペラハウスを思い浮かべるだろう。

 敷地に近づいて初めてその外観を目にしたとき、ぼくは異質感を禁じえなかった。中之島の周辺には川や緑が多く、レンガ張りの古い建物も多く残っている。隣の科学館ともまったく異なるオブジェが突然、現れる。

 周囲の既存建物の意匠とは異次元の現代デザインの登場した例は、パリではルーブル美術館の三角屋根やポンピドーセンター、ロンドンのロイズ本社が思い浮かぶ。

 しかしそれらは、時間がたつにつれて周囲や人の目に馴染み、建築に目が肥えた市民もしだいに受け入れていったと思う。さて大阪市民はこのデザインを受け入れるだろうか。

 地下の内部空間は残念ながら、期待以下だった。パイプの造形はそのまま天窓になっているのだが、地上の躍動感が地下内部にまでうまく伝わっていない気がする。地上と地下では、なにやら別々の建物に見える。

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