2 小説 物語に浸る

村上龍『半島を出よ』

平和ボケのアホ面 ドロップ組の可能性

 (冬幻舎、初刊は2005年)

 期待通りの迫力であり、暴力性であった。これでもかと書き重ねていく細部とデータの描写が、ぼくからすると荒唐無稽なプロットを支えていく。

 北朝鮮の暮らしの厳しさと思想統制の厳格さを、日本の平和ボケぶりを対照させながら、あぶりだしていく。

 筆者が書きたかったのは、心のうちからの切実な思いとは遠く離れたところでフワフワと生きる官僚、メディア、大衆、政治家の「あほ面」ぶりを小説にさらけ出すことだったろう。

 もうひとつは、日本社会からはじき出されたオタク、ホームレス、若年犯罪者、引きこもりたちの可能性をつかみ出すことだろう。

 あの『エクソダス』と似てはいるが、村上龍独特の手法はスケールと訴求力を増している気がする。彼の手法とは、もっとも現代性の高いテーマを取り込み、直感に基づいて近未来を書くということだ。

 『13歳のハローワーク』でも示した彼の感性の鋭さは、同じ1952年生まれのぼくにとってはいつもまぶしい。応援しているその才気に、あらためて脱帽だ。

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