現実と河岸 涙と笑い 縦横無尽に
(朝日文庫、初刊は2002年)
3年ほど前に朝日新聞に連載された小説の文庫版である。さすが浅田次郎だ。笑わせて、泣かせて、またすぐ笑わせてくれる。お得意のヤクザも出てくるし、中年のサラリーマンも。
現実と河岸を行ったり来たりしながら、家族愛や男女の生き方を、涙と笑いをまぶしながら考えさせてくれる。安易な結末ではなくて、単純なハッピーエンドでもない。現世では人間ドラマの種明かしまである。
このあいだ読んだ『オー・マイ・ガアッ!』よりうんといい。引き出しの多さには、あきれ、うなるしかない。