5 映画 銀幕に酔う

邦画『亡国のイージス』

守るべき実質の喪失 原作の危機感伝わるか

(阪本順治監督、2005年)

 日本アカデミー賞の発表会を見ていたら、この作品に出た実力俳優たちが続々と舞台に出てきたので急に観たくなった。福井晴敏の原作は1999年の発売直後から話題になり、駐在先のバンコクで買って読んでいた。

<▲原作の著書>

 真田広之は『ラストサムライ』ほどではなかったが、やはりうまい。原作に近い味を出している。ダイ・ハードのブルース・ウィルスみたいな、とろさと真面目さとタフネスのミックスをうまく演じている。

 北朝鮮工作員を演じた中井貴一も、存在の不気味さとクールな狂気を見事に表現しているように思う。

 いちばん重要で難しい役柄が寺尾聡だろう。国を純粋に思うゆえに、国家にあえて楯突くという心情のありようを観客に伝えきれたかどうか。この俳優にはもともと自衛官とか、国防につく仕事人はふさわしくない気がする。マッチョ感がにじみ出てこないからだろう。

 映画全体では、原作者が「亡国」に込めた意味が聴衆に伝わったか心配だ。原作者の問題意識は、今の日本が戦争の真実を知らず、平和ボケし、責任と決断をになえる組織も人もなく、つまり「守るべき実質さえもなくしつつある」という認識だろう。そんな国家観が理解されないと単なる活劇にとどまるだろう。

 昨年の日本アカデミー賞は、結局、多くの部門が『ALLWAYS 三丁目の夕日』に決まった。

こんな記事も書きました