讃岐・丸亀の純な娘ふたり 悪霊めぐる怪奇
(新人物往来社、2005年6月)
長い時間がかかった。眠りにつく前に枕もとでページを読み継ぐこと2か月、瀬戸内海の讃岐・丸亀藩を舞台にした物語を読み終えた。
主人公は「ゆう」と「佐治」という純なふたりの娘である。江戸からその地に流刑されてきた悪霊、加賀様をめぐる藩内の怪奇事件と少女たちとのかかわりが軸になっている。
現代小説でも発揮しているディテールの確かさと人物描写の的確さは、時代小説でも変わらない。この作家の小説世界には独特の「丸さ」を感じる。おなじ女性の人気作家、高村薫が硬質な世界なのと大きな違いだろう。
それにしても江戸時代を描いた時代小説、読みだすと止まらなくなってきた。小説のネタに困らない豊饒な時代だったのか、ぼくが年を重ねて50代も半ばに差し掛かっているからなのか。