4 評論 時代を考える

立花隆『滅びゆく国家』

ネットは肯定的 小泉には厳しい見方

 (日経BP社、2006年5月)

 日経のウェブサイトに載せてきたネット評論を一冊にまとめた。2年前からことし3月までの時事評論56本が収録してある。

 ぼくが面白かったのは、ネットがメディアに及ぼす影響についての見解と、小泉首相についての評価だ。

 ネットについて筆者は基本的に肯定的な姿勢だ。その潜在力はマイナス面よりプラス面が圧倒的に大きいと考えている。とくに評論では、新聞や雑誌と違って「分量、時間に制限がない」ことが最大のメリットだという。

 筆者はこれまでもネットから膨大な情報を得てきただろうし、この本もネットに発表した文章の集合だから当然かもしれない。読む層やリアクションの違いに触れていないのは、筆者の「知の巨人」としての知名度と発言力が高いため、ネット以外にも発表場所があるからだろう。

 小泉首相への評価は極めて厳しい。だからだろうか、2005年の劇場型の郵政選挙の前に書いた評論を読むと、本番の選挙での小泉圧勝をまったく予想していなかった。敗北を期待していたといった方がいいかもしれない。

<▲立花氏の著作>

 そのため、自民党を含む政党政治についての論評には、あまり説得力を感じなかった。

 これまでの立花氏の著作を振り返ると、ぼくが読んだのはごく一部だろうが、「最先端」とか「超権力」といった世界には強い興味と分析力を発揮する評論家のように思う。しかし郵政選挙で小泉側に投票した一般有権者の「平凡」「大衆」「凡庸」といった資質には、興味や想像力が及ばないのではないだろうか。両方を求めるのが無理なことは承知しているけれど。

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