2 小説 物語に浸る

大沢在昌『新宿鮫Ⅸ 狼花』

待ち焦がれた5年半だったのに

 (光文社、2006年9月)

 待ちに待った新作。期待は大だった。帯にこうも書いてあったから。「待望5年半―」「桁違いの濃度と感動、一気に炸裂するクライマックス」「孤高の啓司・鮫島が迫られる究極の決断とは?」ー。

 この客寄せ文はないよなあ。クスリの世界や都市論や組織論は参考図書からの転載だろうし、やたらと理屈っぽい会話ばかりが続く。全体に臨場感が乏しいので、期待した「桁違い」までの濃度はないし、感動もぼくの期待には届かなかった。

 「炸裂する」はずのクライマックスも、深見が銃乱射する必然性がぼくには最後まで伝わってこなかった。

 主人公格の中国人女性にリアリティが希薄。滞在2年か3年でこんなに中年男に惚れることができるのだろうか。生い立ちがよくわからないので、感情移入もしにくいのだ。

 新宿鮫は、元キャリアの孤高の鮫島に魅かれるし、恋人のロックシンガー晶との仲も気になって、Ⅷまで夢中になって読んできた。本当に待ち焦がれた5年半だったのだ。こんな評価をする鮫ファンはぼくだけだろうか。

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