5 映画 銀幕に酔う

邦画『それでもボクはやってない』

冤罪を素材に司法批判 エンタメ脱し男気

 (周防正行監督、公開2007年1年)

 あの名作『Shall We ダンス ?』からなんと11年か。長かった。周防監督が次に何を撮っているのかずっと気になっていた。この間、バレリーナの奥さんばかりが、どこか無理にテレビに出ている感があり、監督は病気かスランプかと心配していた。

 できたのは痴漢事件で冤罪に問われたフリーター青年と裁判の話だった。

 警察での取り調べから留置場、検事の取り調べ、裁判官たちの表情、そして弁護士や家族や支援者たち…。裁判の手順ととりまくディテールを徹底的に追っていく。

 観客の大半は被告になったことも傍聴したこともない。そんな大多数の人にもわかるようにと丹念に作りこんである。

 そういえば『シコふんじゃった』での学生相撲、『Shall We ダンス ?』での社交ダンスも、ほとんどの人は体験したことがない世界だ。

 そうした地味な分野を舞台にする点は今回も同様だが、大きく違うこともある。笑いとエンターテイメント性がこの作品では皆無であることだ。

 最後は結局、有罪判決で終わるが、日本の司法の現状への疑問と、監督の正義漢としての男気、気構えがドーンと前に出ている。痴漢事件を素材にひたすら真面目に真正面から批判的に切り込んでいる。「疑わしきは被告人の利益に」はもう消え去りつつあるということだろうか。

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