人はこんなにむごいことをするのか
(双葉文庫、初刊2003年6月)
5本の短編はどれも、重くて暗い「人間の業」がもたらす毒がベースにある。人間はこんなにむごいことをするのか、運命とか宿命はかくも残酷なこともあるのかと、ため息をついてしまう。
前回の「出口のない海」と同様、確かな筆遣い、過不足のない描写、予想を裏切る展開と、見事というしかない。
ひとつの作品を読むと、本来なら余韻に浸りたいところだが、すぐに次の作品が読みたくなりってしまい、日曜日の夕方に2時間で一気に読み切ってしまった。
元新聞記者なので、ところどころにそれを感じさせる記述や展開が出てくる。『クライマーズハイ』もそうだったが、とてもリアルな感じと、現役新聞人から見るとちょっと大げさかなあと思うところが同居している。