ダイアナ事故死 女王と首相との駆け引き
(スティーヴン・フリアーズ監督、2006年公開)
ダイアナ元皇太子妃の事故死をどう「処理」するか、エリザベス英女王がトニー・ブレア英首相と悩む過程がテーマだ。
まだ記憶に新しい出来事を主題にしているから、政治的にも、皇室の扱いの上でもかなりきわどいシーンや台詞がある。それなのに、そっくりさんが、実在の人物名で登場して演技をする。
こんな映画、日本ではできないだろうなあ。天皇陛下が主人公の映画をロシア人監督が撮ったように―。
英女王の人間性や、ブレアのポピュリズムは、やはりそうだったのかという印象を受けた。
この内容が本当だとすれば、印象的なセリフが最後に出てくる。女王と首相がダイアナの死を悼む国民やメディアへの対応に悩んだ時の女王の言葉だ。記憶によれば…(ちょっと自信がないが)
「Duty is first、self is second」
ぼくなりに解釈すると「私は自分の感情を抑えることを優先してきた。気持ちを表に出すことははしたないことだ」。ダイアナは逆だった。自分を表に出すことを抑えられず、英王室の流儀とあわなかったのだろう。
こうした科白引用の映画評は、学生時代に夢中になった和田誠の『お楽しみはこれからだ』が元祖だ。あんな洒落たイラストは描けないけれど―。