4 評論 時代を考える

半藤一利『昭和史 戦後編 1945-1989』(再読)

納得の6区分 いまは「滅びの40年」か

(平凡社、2006年4月)

 読み直しである。前作の『昭和史 1926-1945』にも増して、インテリじいさんの漫談調が読みやすさと親しみやすさを加味していることがわかり、一気に再読できた。

 終戦時に15歳、新潟県の中3だったという筆者にとっても、自分が生きてきた同時代史の側面があり、その感覚が選び取る事象にも現れている。

 半藤式の6分類を最終章でまとめている。ぼくの感覚でもしっくりくる時代区分だ。それをもとに、ぼくもおさらいしてみると…

  1. 占領の時代=昭和20年の敗戦から昭和26年まで
    象徴天皇制、主権在民、議会制民主主義、戦争・軍事力の放棄、民法改正
  2. 政治闘争の時代=昭和27年の講和条約から60年安保まで
    象徴天皇制の承認、平和・民主主義議論 →「軽武装・通商国家・経済第一」
  3. 経済第一の時代=昭和36(1961)年から昭和40(1965)年
    強兵なき富国、高度成長、五輪、新幹線
  4. 自信回復の時代=昭和41(1966)年から47(1972)年
    70年万博、72年沖縄返還 → 戦後日本の完全な終わり
  5. 価値見直しの時代=昭和48(1973)年から昭和57(1982)年
    ベトナム戦争終結、ドルショック、石油ショック → 安定成長へ
  6. 国際化の時代=昭和58(1983)年から昭和64(1989)年
    官僚計画経済国家のピーク、株価3万8915円、1990ソ連崩壊

 前著の「40年史観」を戦後にあてはめると、昭和27年の講和条約発効を起点にすれば40年後は1992年になる。この間に世界2位の経済大国にまでなったのに、最後はバブルがはじけている。

  1905年の日露戦争に勝ってから40年後に敗戦を迎えた戦前と同じ。また滅びの40年にかかっているのでは。

 最後の最後に出てくる「おせっかいな忠言」は次の五つだ。

  • 無私になれるか、まじめさを取り戻せるか
  • 小さな箱から出る勇気
  • 大局的な展望能力
  • 他人に頼らず世界に通用する知識や情報を持てるか
  • 悠然たる風格を持てるか
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