剣の腕 これほど武士に切実だったとは
(新潮文庫、初刊は1980年)
このまえ第1弾に魅了された作品『用心棒日月抄』の第2弾である。枕元において毎晩、眠りに落ちる前に少しずつ読んだ。かみしめるように。
主人公の青江又八郎は、藩の家老の悪事を示す連判状を追って上京し、それを所有する剣豪を江戸の街で探し出す…。藩命ではあるが表向きは脱藩。路銀ももらえない。やむなく用心棒をして日銭を稼ぎながら役目を遂行する。
彼を手助けする忍者の佐知の存在感も際立っている。そのキャラクターと色気が、物語に彩りを与え、みずみずしさを醸し出している。
しかしまあ、剣ができるかどうが、江戸時代の武士にとってこれほど切実なことだったとは思わなかった。剣はその男の人格の骨格を鍛え、支え、守る。そのうえで、いやそれゆえに、いさぎよく散る…。
青江と同じ用心棒仲間たちの性格づけもくっきりしていて、飽きない。このシリーズにはあと2冊、あるらしい。楽しみだ。