2 小説 物語に浸る

藤沢周平『竹光始末』

カタカナも洋数字もない そこがいい

 (新潮文庫、初刊は1976年)

 この半年、ひたすら、この人の作品ばかりを読んできた。

 長編だと続きが読みたくなって通勤電車の中や、ひとりランチを社外で食べた後などにもむさぼるように読み続けた。

 しかしこうした短編は、枕元で少しずつ読み進めた。収められた短編があまりに情緒に富んでいるためだ。電車の中では、藤沢と江戸ワールドの香り、彩り、ざわめきがかき消されてしまう気がした。

 この本には短編もしくは中編が6編あつめてある。どれもみな味わい深く、暗い情念をからりとした品格ある文章ですくい取っている。

 カタカナも洋数字もいっさい出てこない。和の世界。そこがいい。当たり前なのかもしれないが、60歳を前にすると、ヒトの情感はかくも遺伝子とDNAに従順になるのかと感心してしまう。

 ありがとう藤沢さん。堪能させてもらいました。そろそろ別の作家も読みます。でもきっとすぐに、再読したくなる時がやってくるだろう。

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