伝説の脚本の小説化 体温のこもった台詞
(文春文庫、1998年1月)
このまま眠りたくない。なにか読みながら眠気を待ちたい。面白ければそのまま読み続けてもよし。眠くなればそのまま続きは夢で見ればいい。
そんな枕本、最近は藤沢周平と伊集院静だった。『いねむり先生』を読み終えてさあ次をとうちの本棚の前に立ち、迷った末に手に取ったのがこの本だった。
1981年の飛行機事故で急死した「伝説の脚本家」向田邦子のシナリオがベースになっている。中野玲子という人が小説化したとある。
もとがシナリオだから、具体的で日常的な場面と体温がこもった台詞が続くから、映像が浮かぶように中身が伝わってくる。
藤田弓子の解説が秀逸だ。TBSテレビ『冬の運動会』の配役のひとりとして収録の際の裏話を綴りながら、見事な向田邦子論になっている。ほかの著名な俳優さんたちとの思い出もみな向田邦子につながっていく。
向田邦子のドラマでは『あ・うん』と『阿修羅のごとく』がもっとも記憶に残っている。この人のドラマ、もっともっと観たかった。