5 映画 銀幕に酔う

邦画『死刑台のエレベーター』

フランス名作に挑戦 「女の情念」迫れたか 

 (緒方明監督、2010年10月、DVD)

 もとのフランス映画は大学生時代に「すでに古典的な名作」として観た記憶がある。細部は覚えていないが、主役のジャンヌ・モローは鮮明に記憶にある。

 その後欧州を旅行する前のぼくでも「フランス的」と感じた女優だった。いまなら「大人の色気と知性と自我」を感じさせてくれた、と表現できる。

 今回はその古典的名作のリメークに日本が挑んだ。本棚の世界映画全史(猪俣勝人著、1974年)で確かめてみると、場所はパリから東京、時間は戦後直後から現代へと変更してあるものの、基本的な枠組みは変わっていない。

 日本版はやはり、ジャンヌ・モローと吉瀬美智子を比べてしまう。ぼくは「女の情念」みたいなものが日本版はちょっと乏しい気がする。その辺りは後半に複雑に絡んでくる若い男女(玉山鉄二、北川景子)に食われている気もした。

 自宅でDVDを妻と観た。妻は途中から「怖い」といって観なかった。