(フィリダ・ロイド監督、日本公開2011年12月)
メリル・ストリープの演技がすべてだった。さすがである。マーガレット・サッチャーの生い立ちや議員初期の苦労など初めて知ることも多かった。
彼女が首相になってからは、ぼくがニュースを通じて抱いてきた印象とさほど変わらない。若いころからとされる勝気さや、首相リタイア前の独善的な言動、リタイア後の嫌味な元首相ぶりなどである。
サッチャーがもし男だったら、英国病を克服できたろうか、超保守的なオヤジとしてもっと反発を食らっていなかっただろうか―。そんなことも考えた。こうした問いはひどい女性蔑視で、英国の社会と政治をよく知らないから言えることかもしれない。
映画の構成は、回想や老境シーンが複雑にからみあっている。英国の現代政治史を詳しく知らないぼくには、ところどころ入り込みにくかった。
もともと英国が好きで、強い関心があるぼくには何から何まで興味津々で、勉強にもなった。でも娯楽映画ではない。5年前に観た『クイーン』に近い。1年前に観た『英国王のスピーチ』にはもっと感動や驚きもあった。