寸分の狂いもなし 面白すぎる
(新潮文庫、初刊は1978年8月)
2年ぶりに読み直した。感服した。面白すぎる。縦系の脱藩と浪人暮らし、横系の赤穂浪士と討ち入り。その交錯に寸分の狂いもない。
きりりとした文章、余韻が漂う男女の機微、武士らしい正義感と命を怖がらない凛々しさ。何もかもが、現代の世と男たちにないものばかり。まあ江戸の街が舞台なら、今の世と比べての繰り言を言わなくても済む。
読み直しのきっかけは、NHKBS時代劇で五味康祐原作の『薄桜記』を観たからだ。旗本武士が浪人になり用心棒になる理不尽な境遇もそっくりなら、浅野家の武士との接点が出てくるのも似ている。