2 小説 物語に浸る

藤沢周平『孤剣』『刺客』『凶刃』(再読)

用心棒も中年に 齢重ね新たな味

(新潮文庫、初刊は1980年と1983年と1991年)

 シリーズ第1弾となった『用心棒日月抄』は、このあいだ読み直してみてもあまりの面白さに呆然とするしかなかった。その勢いで続編の『孤剣』、『刺客』、『凶刃』の3冊も続けて読み直してみた。

 正直に言うと、第1弾がいちばん手ごたえがあった。小説としての切れ味だけでなく、とぼけた味やユーモアも塩梅よく含んでいて、すべてで最上だろう。赤穂浪士の討ち入りという国民的、歴史的な事件と同時並行させていることで時代感覚もくっきりとしている。

 主人公の好漢、青江又八郎は2弾、3弾と進むのと並行して、藩と江戸との間を行ったりきたりする。それなりに年齢も重ねる。その過程で、物語の第二の主人公は佐知になっていく。

 4部の『凶刃』になると、さらに年輪を重ねて中年になった又八郎が江戸へ出てきて、佐知とののっぴきならない関係が小説に食い込んでくる。年齢がぼくに近づいてきて、どきどきもする。

 それはそれで藤沢周平の味、なのであろう。

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