あきない3時間 『オペラ座』と比べてしまう
(トム・フーパー監督、日本公開2012年12月)
昨年末に公開されたミュージカル大作だ。美しいメロディーの歌に乗せたスリリングで悲劇的な展開は、あきない3時間だった。楽しめた。
ヴィクトル・ユゴーの原作があり、舞台ミュージカルでも有名なストーリー。舞台は19世紀半ばのパリで、監督は『英国王のスピーチ』のトム・フーバー。成功への条件はそろっているだけに、製作陣が感じた圧力も強かっただろう。
こうなるとぼくは、性格上、ぼくが観たことがある中での舞台・映画ミュージカルの傑作『オペラ座の怪人』と比べてしまう。ぼくの好みでいうと『オペラ座』に軍配を上げたい。全体の完成度、歌のアピール度、濃密感において手ごたえは上の感じがするからだ。
ただ物語の場所と時間はかなり違う。『レ・ミゼ』は舞台と時間が飛んでいく。『オペラ座』はほぼ劇場内で完結している。
音楽も大きく違う。『オペラ座』は、耳に残りやすい音階とダイナミックなリズムを繰り返しながらステージを追いかけていくところが強烈だ。『レ・ミゼ』は科白がわりに、語り掛けるように歌う感じが強く感じる。
人間の内面に深く迫るという意味では、『レ・ミゼ』の方がテーマが幅広く、老若男女に訴えてくるだろう。現代人の心にも刺さりやすい。『オペラ座』は設定からして、かなり特殊な環境の男女の物語だ。だから濃密に描けるという側面もある。
そう考えるくると、こんな比較そのものが意味がない、とも思えてくる。いいものはいい、という結論になりそうだ。