5 映画 銀幕に酔う

邦画『小川の辺(ほとり)』

痛々しい設定 納得いく終幕 藤沢の世界

 (篠原哲雄監督、公開2011年7月、NHKテレビ)

 小藩の武道に秀でた好青年が、上司の命によって、剣友であり、妹の夫でもある脱藩武士を切りにいく―。藤沢周平『闇の穴』所収の短編が原作。ぼくはまだ読んでいないけれど、藤沢ならではの痛々しい設定だ。

 東山紀之が演じる主人公も、『半沢直樹』の金融検査官役で知った片岡愛之助もとてもいい演技をしている。勝田涼の若い奉公人役もいい。

 しかも題名らしい終わり方だ。ぼくも、そうこなっくちゃと、納得がいった。映像も日本の美を強く意識していて、よかった。

 惜しむらくは、主人公の妹、脱藩藩士の妻の演技だろうか。気の強さは出ているけれど、ふたりの男をつなぐ大事な女性なので、にじみ出る気品のようなものがもう少し出ていればと思った。ぼくだけの感性かもしれないが。

 藤沢周平の世界にどうしてこんなに惹きつけられるのだろう。映画・ドラマだけでも山田洋次3部作に『必死剣 鳥刺し』『蝉しぐれ』を観て今作である。

 江戸時代の武士というのは、なんと生きにくく、がんじがらめの職業であったことか。だからこそか、にじみ出る苦悩も人間くさくなる。いまのサラリーマン生活にも似たところがあって、それが共感を呼ぶのだろう。

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