5 映画 銀幕に酔う

邦画『利休にたずねよ』

戦国の頭×茶の求道者 天才ふたりの反目   

 (田中光敏監督、公開2013年2月、機中放映)

 原作は直木賞受賞作で、作者の山本兼一氏は数か月前に亡くなっていた。その時から早く読みたい、映画も観たいと思っていた。旅行でシンガポールへ向かう機中の映画リストにこの作品があり『小さいおうち』に続いて機中で観た。

 注目はなんといっても、利休を演じる市川海老蔵だった。彼の舞台を観たことはないけれど、2010年に酔っぱらって暴力事件を起こした時に「将来期待の歌舞伎俳優」と評されていたのを覚えていた。

 その評価、この映画を観て納得した。目の力、立ち居振る舞いが別格である。利休は政治権力とは別次元で美や茶の神髄を追い求めた。そんな天才的茶道者の生きざまを、抑制が効いた演技で見事に表現していると思った。

 日本の茶道や利休の美についても、いくつか重要なことを感じた。あの戦国時代にあって、戦いに明け暮れていた武家集団から茶道が熱狂的な支持を得たと描かれていることに正直、驚いた。

 さらに利休は「手あかがついた美や価値観」を徹底的に排し、何気ないものに人による削りを加えることで美を意識の中に昇華させようとした、とぼくはとらえた。

 秀吉は権力は手に入れたものの、美意識においては俗物とされる。ふたりの反目は、歴史の皮肉というしかあるまい。

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