超豪華な脇役 「健さんと一度は映画に」?
(降籏康男、公開1983年11月、テレビ放映)
24日の『駅 STATION』に続く高倉健の追悼放映。たしか富山支局時代に観た気がする。「レンガ倉庫わきの赤ちょうちん」を覚えていた。
居酒屋主人の健さんは例によって「不器用で一本気で控え目」である。ぼくが思い描く健さんそのもので、ある意味、安心して見ていられる。
健さんへの思いを断ち切れずに崩れていく大原麗子の演技がすごい。『駅』でちらっと出て、敬礼シーンだけで存在感と演技力を示した、いしだあゆみを思い出した。
この段階では健さんはすでに、後につくられる『鉄道員(ぽっぽや)』や『ホタル』『あなたへ』と同じオーラに包まれている。この俳優は軸がしっかりしていて、その気質は公私とも不変のままだったことの証なのだろう。
脇役たちの何と豪華なことか。田中邦衛、伊丹十三(さすがだ!)、池辺良、左とんぺい、小松政夫、佐藤慶…。歌手役のちあきなおみも光っている。
客で1回しか出ない人たちもなかなかの顔だ。原作の山口瞳、漫画家の山藤章二。常連の武田鉄也、伊佐山ひろ子…。
「健さんと同じ映画に出たい」。そんな願いがにじみ出ている。それを健さんは、照れた感じで受け止める。そして、あのしゃがれた声でこう言って頭を下げるのだ。「いつも、すいません」
エンディングに流れる健さんの歌は、詞・曲とも加藤登紀子だった。ぴったりなので、この映画出演が決まって作ったように思えるが、順番は逆かもしれない。曲が先にあって健さんが歌うことになり、妻の役も加藤登紀子になったかもしれない。地味な性格だけど、不器用な夫と居酒屋を支える芯の強い妻…。加藤登紀子は見事に演じていたと思う。