とんでもない女 奇抜な警部 未知の世界
(文春文庫、2014年9月)
この小説は専門雑誌の2014年海外ミステリー部門で軒並み上位にランクされていた。読み手のプロたちが面白さにお墨付きをつけているのだ。どうにも気になって、お正月の休みに読んだ。
ぼくが昨年読んだ小説は、日本の時代小説が多かった。海外作品は数えるほどだった。しかも村上春樹訳の『ロング・グッドバイ』はすでに古典の趣があった。ロバート・B・パーカーの『灰色の嵐』もシリーズものだった。
それらと比べると、フランス人作家によるこの話題作は、ぼくから見てもまったく異次元の世界へと飛んでしまっていた。
邦題では『その女』という接頭語がついただけあって、アレックスという女性は、唯一無二のとんでもない存在だ。その精神世界や復讐心をぼくは想像すらできない。性的虐待というものがどれほど残虐で、ひとの心にどんな無残な傷跡を残すのかも、わかったといえる気がしない。
だからこの小説の描写は時として、想像と理解を越えていたり、辛いものがあった。アレックスの行動も予測がつかないことの連続だった。
事件を追いかけるパリ警視庁のヴェルーヴェン警部もかなり奇抜な設定だが、アレックスと比べればその魅力も含めて理解可能と思った。
とにかくこんなミステリー読んだことがない、のひとこと。それがフランスから出てくるのも驚き。この作品はヴェルーヴェン警部シリーズの第2弾らしい。第1弾も読むかどうか、ほかの候補と比べながら本屋で悩むことになるだろう。そんな悩みだって、読書の楽しみのひとつに違いない。