2 小説 物語に浸る

高田郁『みをつくし料理帖 2-10』

ひと月でイッキ読み 純な澪に導かれ

 (ハルキ文庫、2009年10月~2014年8月)

 第1弾の『八朔の雪』で一読惚れしたのが1月末だった。それからも9冊を読み続けた。このひと月、小説はこのシリーズだけを読んでいた。通勤と就寝前がそのための時間。物語世界にどっぷりと浸る愉しみを堪能できた。

 最初から感じていたことだが、『居眠り磐音』シリーズの面白さと同じような魅力を感じ、味わいながら読み通した。

 共通点の第一は、なんといっても、主人公の性格が純で、生き方がまっすぐなことだ。江戸時代を舞台にした小説の世界の絵空事とわかっていても、感情移入しながら読むことで、カタルシスがある。

 取り巻きも多彩なうえに、こんな人たちと暮らしてみたいと思えるキャラクターばかりなのも共通だ。磐音ならおこんとその父親、酒癖と口は悪いが人のいい浪人仲間、情に厚い豪商、いまや大夫の許嫁…。

 みおつくしなら、気のいい店主、温厚でやさしいお武家や医者、口は悪いがまっすぐな戯作者、いまは大夫の幼なじみ、その大夫につかえる吉原の男…。

 物語の展開では『みをつくし』の方が予測しがたく、意外性を感じた。「おお、そうきますか」と筆者に声をかけたくなるような時があった。

 先日の朝日新聞が「シニアに人気の書き下ろし時代小説 特設コーナーも」という記事を載せていた。人気作家トップツーとして佐伯泰英と上田秀一が紹介されていた。トップスリーの3番目に高田郁『みをつくし』が置かれていた。

 あまりに面白いので、職場のランチタイムに数回、この本と作者のことを同僚に熱く語った。でも知っている同僚にはまだ会っていない。いつかどこかで「えっ? わたしも好きなんですよ」というフォローがあるだろうか。楽しみでもあるけれど、心の片隅に、いつまでもぼくだけの楽しみにしておきたいという願いもある。

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