IT・特撮を駆使 活劇の面白さ前面に
(サム・メンデス監督、日本公開2015年12月)
ダニエル・クレイグがポンド役を演じる007映画としては、2012年に観た『スカイフォール』に次いで4作目。とても楽しみにしていた。
だが第一印象は、ずいぶん荒いつくりになったなあ、だった。
ぼくが007シリーズに抱いていた印象は「英国らしい余裕や香りや意識的抑制といった味付け」があるスパイアクション映画だった。今回はそうした味付けが薄れ、活劇としての面白さやIT技術や特撮が前面に出ている。
「英国紳士で好色なタフガイ」のボンドも、前作までは、殺しと好色以外では一線を越えない抑制を見せていたが、今作ではそれをなくしている。
もうひとつ、大事な悪役に存在感とか凄みがない。ボンドガールも知的でも肉感的でもない。ボンドが心惹かれるほどの女性には見えない。
こうした見方は、ぼくが、60歳を過ぎたオールドファンになってしまったからなのだろうか。そうだとすると、感性が鈍ってしまい、映画を観たときに感じる楽しさの量をみずから減らしていることになる。それはまずいぞ。