玉音放送への「凝縮」 映像化する難しさ
(原田眞人監督、公開2015年8月)
終戦70年の昨年夏に公開された際、劇場版を見逃してしまい、今回DVDでやっと観ることができた。原作の半藤一利『日本のいちばん長い日 決定版』は昨年5月に読んでいたので、本と映画の違いから考えてしまった。
まず、あの日の緊迫を本以上に映画で伝えるのは難しいと感じた。なぜなのだろう。天皇のそれまでの戦争とのかかわり、鈴木首相や阿南陸相とのつきあい、それぞれの生き方や背景が「あの日」に凝縮されているからだ。
それらを伝えやすいのは活字であり、それを伝えずして「終戦させる」ことの重さを理解できないだろう。
畑中陸軍少佐(松坂桃李)の狂気の思いは演技の目力で象徴させることができても、軍の体質や頭の中の理屈まで画面に落とし込むのは難しい。
ぼくが活字重視人間だからそう思うのだろうか。原作を読んでいなかったり、終戦時の軍や内閣、皇居内の警備などが予備知識でわかっていないと、2時間強では玉音放送までの展開を理解しずらいだろう。
とにもかくにも、普通の映画と違って、面白いとか、観てよかったとか、知的スリルを感じた、といったありきたりの感想をいう映画ではない気がする。
1945年8月15日に凝縮される第二次大戦と日本の敗戦について、あれから70年という節目に、よく知らなかった人は全容をつかみ、ある程度知っている人は考えなおすきっかけになればいいのではないか。もっと知りたい人は原作を読む動機になればいい。