言葉が滑り、浮き、走り、飛び跳ねる
(角川文庫、1976年3月)
本棚にあった古い文庫である。棚卸しというか、新刊本を買う前に読んでいない本は読んでおこうといった感じで読んだ。
もとは舞台劇のための戯曲である。それを長編小説として書き下ろして、最初から文庫として発売された。
言葉が滑り、浮き、走り、飛び跳ねる―。これを舞台でやるとすれば、俳優たちも観客も、テンションが天井を突き抜けるぐらい高くないと、とても演劇として持たないだろう。
使われている言葉は、耳に慣れた、手あかがついた常套句ばかりなのに、この作者の手にかかると、異次元のおかしさや面白さに転じてしまう。すごい。
再読のつもりだったが、まったく記憶になかったので、買ったものの読まずに本棚に眠っていたらしい。
巻末の日付には「1983年7月、23刷発行」とある。が富山支局時代だ。筆者が脚本もてがけた映画『鎌田行進曲』(深作欣二監督、1982年10月)を観て感動し、過去作品にも触れたいと、何冊かまとめて買ったようだ。
きょうまで読まずにいてもったいなかった。だけど30数年ぶりにはなったが、読むことができて、もっとよかった。読書の愉しみに決まりはない。