5 映画 銀幕に酔う

アニメ『君の名は。』

きれいな絵 入れ替わり 青春ファンタジー

 (新海誠監督、公開2016年8月)

 映画が始まってまず驚いた。絵がとてもきれいで、ていねいだ。透明感と清潔感もある。アングルも斬新で、たとえば田舎の家の障子や都会の電車のドアの開閉シーンが思わぬ角度から象徴的に何度も使われていた。

 それとたとえばスマートフォン。いまの若者にはなくてはならないアイテムを愛しむように描いている。その画面からは、強い同時代性だけでなく、中高校生たちの仲間意識に呼び掛けている気がした。

 物語の展開は「入れ替わり」現象がカギになると、事前に新聞記事を読んでいたのでなんとかついていくことができた。女の子がベッドで起き上がるときの驚きの表情とか、男の子が目覚めに違和感を抱いているシーンは、何も知らずにいきなり見ると「???」になるだろう。

 東京と飛騨、入れ替わり、時間のずれ、隕石落下…。このあたりの関係や時系列がゆるゆるとしたままシーンが流れていく。入れ替わりも何度か起きるので、よく飲み込めないシーンもあった。リピーターが多いとか、同時発売の本が売れている理由でもあるだろう。中高生に大ヒットし、総動員数はあの『シン・ゴジラ』を抜いたらしい。

 観ながら考えていたのはもうひとつ、終戦後のドラマ『君の名は』との違いだった(今回はタイトルに句点がついているが)。「放送中は銭湯がらがら」という伝説の大ヒットになった背景には、悲惨な空襲体験がきっかけになっていることと「会えそうで会えない男と女」の設定があったとされる。

 今回の大ヒットは「会えそうで会えない」ところは確かに似ている。戦争体験に相当する事象は東日本大震災しかないけれど、映画の背景として直接比較するのは無理がある気がする。年齢層もかなり違うだろう。

 そんなこんなで結局、入れ替わりをカギにした現状肯定感の強い青春ファンタジーとみた。理屈をこねつつ十二分に楽しめたので、ぼくは満足だ。

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